独創的でユーモラスな科学研究などに贈られる「イグ・ノーベル賞」の医学教育賞を、昭和伊南総合病院(駒ケ根市)の消化器病センター長の堀内朗氏が受賞しました。
堀内氏は大腸内視鏡検査の痛みを減らすため、座った姿勢で肛門に内視鏡を挿入する方法を研究しましたが、自らが患者役となって体を張った研究が評価されました。
しかし、座って挿入する方法は患者によって感じる不快さにばらつきがあるなどの問題点が判明したため、研究は途中で終了しました。
その後堀内氏は、内視鏡検査時の全身麻酔の導入や、検査時に見つかったポリープを検査と同時に除去するなど、日本では新しい手法を次々に取り入れました。
麻酔による検査は、患者が知らない間に苦痛もなく終わり、検査が終われば間もなくして車の運転も可能です。
検査時にポリープが見つかった場合、検査と同時に除去すれば日を改めて除去手術をする必要がないため、患者からは喜ばれていますし、現在では同様の方法が一般的になっています。
08年からは予約不要の内視鏡検査を始めましたが、評判を聞いて全国各地から患者が集まっているそうです。
長野県内のがんの部位別死亡者数(平成27年度)は、肺が1位、大腸が2位、胃が3位となっており、大腸がんによる死亡者が多いのが特徴です。
堀内氏は大腸がんの患者が増えている中で、内視鏡検査を気軽に受けられる環境づくりに熱心に取り組んでいますが、大腸がんによる死をゼロにするために、是非検査を受けて欲しいと訴えています。
堀内氏は上伊那郡飯島町の出身で、伊那北高校から信州大学医学部に進学し、米国留学などを経て1999年から昭和伊南総合病院に勤務しています。そして、この病院で内視鏡に関する研究を始めました。
県内では医師不足が大きな課題となっていますが、堀内氏のように様々な経験を経て故郷の病院に勤務していただけるのは大変ありがたいことで、今後は県としても故郷で働く医師を増やすための対策を充実する必要があると考えます。