アフガニスタンからの邦人救出

イスラム主義組織タリバンがアフガニスタンに侵攻して実権を握り、治安が悪化していることから、同国に住む日本人の安全が確保されるのか見通せない状況です。

政府では、急遽自衛隊機を同国に派遣して救出作戦を展開しましたが、残念ながら救出できたのは日本人1人とアフガン人14人(米軍の要請による)と報じられています(写真は作戦に参加した自衛隊輸送機C130:自衛隊HPより)。

救出の対象となったのは、大使館や国際協力機構の日本人・アフガン人職員や家族など500人です。

自衛隊が活動できるのは米軍が管理する同国のカブールの空港のみであったことから、活動に大きな制約がありました。

カブールの空港周辺はタリバンの厳しい検問があって近づくのも難しく、安全に救出するには多くの課題もありました。

これに関しては、自衛隊の活動がもっと早い段階で行われていれば、多くの人を救出できたはずであり、初動の遅れが招いた事態との報道もあります。

韓国では、初動が早く400人もの救出に成功しています。

8月末に米軍が同国から撤退し、空港に近づくことができなくなったため、退避希望者の大半を残したままで救出作戦は終了することになりそうです。

自衛隊の在外邦人等の保護措置については、自衛隊法に規定されています。

これは、国際情勢の変化に伴って、2015年にいわゆる「平和安全法制整備法」が成立し、関係の10の法律が改正され、この中で自衛隊の活動範囲を広くするために自衛隊法も改正されました。

平和安全法制整備法に関して、集団的自衛権に関する記者会見の中で、当時の安倍首相は具体例として、「自衛隊は、海外に住む日本人が紛争に巻き込まれたとしても、現行の法律では守れない。」と説明しています。

自衛隊法の改正により、自衛隊の在外邦人等の保護措置が規定され、今回日本人の救出作戦を実行しました。

在外邦人等の保護措置を行えるように自衛隊法が改正されたものの、今回の救出作戦ではその目的が達成できなかったことは大変残念です。