アンデルセン童話の「裸の王様」は、誰でも知っています。
今その王様とも言われているのが、日産自動車の前会長カルロス・ゴーン氏です。
なぜゴーン氏は、王様になってしまったのでしょうか。
倒産の危機に直面していた日産の立て直しを任されたのが、ゴーン氏でした。
専制型(独裁型)のリーダーとして定評のあるゴーン氏は、経営の立て直し役として、当時は最適任者でした。
専制型のリーダーの特徴は、「自分は絶対に正しい」「部下は自分の言ったとおりに動くべきだ」と考えています。
自分の思い通りに進めているうちに、回りにはイエスマンしかいなくなります。苦言を呈することができる側近がいればいいのですが、多くは排除されてしまうのです。そして、ついに裸の王様になってしまいます。
世界的に著名なアメリカの経営学者であるドラッカー氏は、著書「経営者の条件」(ダイヤモンド社)の中で、こんなことを指摘しています。
経営者に求められることとして、「行わなければならない意思決定は、満場一致で行えるようなものではない。相反する意見の衝突、異なる視点の対話、異なる判断の間の選択があって、初めて行いうる。従って、意思決定において最も重要なことは、意見の不一致が存在しない時には、意思決定を行うべきではないということである。」
つまり、意思決定の場で提案された事項について、異論や苦言があって、初めて間違いのない決定が可能となるのです。ドラッカー氏は、リーダーとしてのあるべき姿を、見事に表現しています。
専制型のリーダーでなくても、リーダーは常に裸の王様になる危険性を抱えています。
裸の王様にならないためには、リーダーは反対意見を言う側近や部下を大切にすることです。また、リーダーは人として「正しい道」を歩むことが大切です。
日産では、これまで優秀な側近がゴーン氏により排除されてきたのではないでしょうか。
そして、後任の側近は見て見ぬふりをして来たのではないでしょうか。
本来であれば、側近や部下は勇気を持って、会社を変えて行く行動に出なければならなかったわけですが、ゴーン氏という余りに大きな力には、逆らえなかったのでしょう。
社員の主体性を重んじ、社員を大切にし、社員の幸福実現を最高の目標に掲げ、組織が一丸となって「いい会社を作る」(社是)ために、頑張っている会社があります。
私の地元伊那市にある伊那食品工業株式会社です。(写真は『健康パビリオン』 伊那食品HPより)
伊那食品工業(株)の経営方針には、学ぶべき点が多いと思います。
この会社の経営方針(年輪経営)は全国的に注目を集めており、今や世界の「トヨタ」のリーダーが参考にするまでになっています。