人事権を行使して求心力を高め、官房長官・首相と権力の中枢を歩んだ菅首相が退陣することになりました。
昨年首相に就任した当時は、自著である「政治家の覚悟」が注目を集めて、多くの人々に読まれました。
この本の中で人事についても書かれており、官僚を更迭(実際は左遷)した事実が記述されています。
指示に従わない官僚は、左遷したということです。首相就任当時も取材に応じて、言うことを聞かない官僚は左遷すると言っています。
行政の世界では、トップの意思により職員を左遷することが無いとは言えませんが、トップが自ら左遷を公言することは通常考えられません。
菅首相は人事権を行使する中で、官僚を従わせてきたのでしょう。官僚もサラリーマンですから、左遷させられるのは避けたいところです。その結果官僚は恐怖心を持ち、本意ではなくても指示に従わざるを得なくなります。
こうしたことを続けていると、官僚は指示待ちになり、提案などはしなくなります。モチベーションが上がらず、活気のない職場になってしまいます。
人事に強いはずの首相も、この度の総裁選前の党役員人事では議員からそっぽを向かれて孤立し、退陣せざるを得なくなりました。議員は、官僚のようには上手くいきません。
まさに「策士、策に溺れる」出来事であったと報じられています。
こうしたことは、国の機関に限ったことではありません。似たようなことは、地方組織でも起こりえます。
トップの在任期間が長くなると権力が増し、つい強権的な人事や左遷人事を行うことがあります。また、「ごますり」や言うことを聞く人を自分の近くに配置しやすくなります。
トップにある人は、菅首相のことを「対岸の火事」だなどと決めつけずに、自分はどうなんだと今一度考えて欲しいものです。