豪雨災害とダム建設について

7月上旬から降り続いた豪雨により、全国各地で甚大な被害が発生しました。昨年の台風19号に続いての大災害となりました(写真は台風19号の時の三峰川の濁流)。

熊本県では球磨川が氾濫し、老人福祉施設の入所者をはじめ多くの犠牲者が出ました。

球磨川に関しては、過去に球磨川支流の川辺川への多目的ダム建設を巡り、大きな議論がありました。

地域や県知事の反対を受けて、2009年には当時の民主党政権が計画を中止したことから、事業実施とはなりませんでした。

しかし、「特定多目的ダム」としての計画の廃止手続きは行われていないため、計画自体は現在も存続しています。

今回の災害を受けて、国によるダム計画の検証を行うことが検討されており、検討結果次第ではダムの建設計画の議論が、再燃する可能性があると報道されています。

当時はダム建設を推進すべきとの声もあったことから、今回の災害を受けて地元からは「もしダムがあったら」との声も出ているようです。

さて、長野県ではかつて田中知事が「脱ダム宣言」を行い、大きな議論が起きました。

この宣言の影響を受けたのが、天竜川の支流である三峰川上流の当時の長谷村地籍に計画していた「戸草ダム」です。

このダムの建設計画は、天竜川の治水を目的に三峰川総合開発事業の一環として昭和63年に着手されました。

田中知事は「脱ダム宣言」を実行に移し、2001年(平成13年)には戸草ダムに関して、工業用水と発電に係るダム使用権の取り下げ申請を国に行ったため、事実上ダムの建設は進められなくなりました。

その後平成21年には天竜川水系の河川整備計画が策定され、戸草ダムについては「今後の社会経済情勢等の変化に合わせて建設時期を検討する」こととされました。

このダムに関しては、すでに水没地の用地買収が終了し、居住者はやむなく故郷を捨てて移転しており、いつでも計画を復活できる状況にあるのです。

近年の気候変動によるゲリラ豪雨の多発は、これまでの常識というものを覆すものであり、災害を最小限に抑えるためにあらゆる手段を取らなければなりません。

私は、「戸草ダム」については計画を中断した時の社会経済情勢とは大きく変わっていることから、「建設時期を検討する」段階に入るべきと考えます。

合わせて自然エネルギーの活用のために、ダム建設時には県企業局などにより水力発電所を併設すべきと考えます。