新型コロナの収束が見えない中で、憲法の改正に関する議論が自民党を中心に進められています。
自民党の改正案では、「緊急事態」に関する条項を新設することとしています。
それによると、外部からの武力攻撃、社会秩序の混乱、大規模な自然災害などの緊急事態において「緊急事態」を宣言し、政令を制定することができるとしています。
「緊急事態」では政府の権限は強化され、国民の私権は制限されます。
制定される「政令」は法律と同等の効果を持ち、罰則も設けられるものと見られています。
コロナ特措法に基づく「緊急事態宣言」は4月7日に、5月25日には「緊急事態解除宣言」が発令されました。
自民党ではコロナの「緊急事態宣言」発令を契機に、この際憲法改正における「緊急事態」条項に、感染症に関する「緊急事態」加える考え方が出されています。
コロナの感染が収束しない中で、外出や営業の自粛要請などではなく、より強硬な対策や私権制限を行うべきと主張する人もあります。
こうした議論を受けて、憲法改正の内容に感染拡大時の「緊急事態」を加えるべきという考え方が急遽出てきました。憲法改正における「緊急事態」の内容を国民がよく理解できない中で、国民に受け入れやすい感染症に関する「緊急事態」を加えようとするものです。
私は、感染症に関する「緊急事態」と憲法改正における「緊急事態」とは全く異なる性格であり、同列に議論すべきではないと考えます。
必要があればコロナの特措法を改正すれば、十分に対応できると考えます。
また、改正案では緊急事態宣言を発令した場合には、「衆議院は解散されず、両議院の議員の任期は特例を設けることができる。」とされています。これは緊急事態になれば衆議院議員の任期を延長し、国会で集中的に議論が行えるようにするものです。
国難と言われるコロナ禍では、政府は臨時国会召集の要請も拒否して閉会しているのに、感染症を加えた憲法改正案では国会の議論を行えるようにするというのは、全く矛盾していると考えます。
憲法改正の議論をする前に、コロナ収束と経済再生のための議論やコロナ特措法の改正に関する議論を優先して欲しいと思います。