双葉町で「準備宿泊」始まる

福島県双葉町(人口5800人、2200世帯)は、2011年3月11日に発生した福島第1原発の事故により避難指示が発令され、現在全町民が避難生活中です。

事故後、町のほぼ全域が「帰還困難区域」に指定されました。

「帰還困難区域」のうち、今年6月以降の避難指示解除を目指す「特定復興再生拠点区域(復興拠点)」などを対象に、居住再開を前提とした「準備宿泊」が1月20日に始まりました。

住民が町内の自宅に泊まれるのは、避難後初めてのことです。当日「準備宿泊」したのは、4世帯5名にとどまったと報道されています。

町民は事故後に転々と移動を余儀なくされ、未だに仮役場が福島県のいわき市に置かれています。

既に避難指示解除された区域と復興拠点区域は、全町の面積の15%にとどまっており、除染を進めない限り住むことができる地域は限定されます。

町は放射能汚染に加えて大津波により甚大な被害を受けました。津波による被害家屋は、すべてが取り壊される予定です。

今後どの程度の住民が町に戻ってくるのかは不明ですが、働く場が保障されない限りは生活の目途も立たず、戻るに戻れません。

私は令和2年10月に、福島県・宮城県の大震災の復興状況の調査を行いました。この中で双葉町も調査しましたが、目を覆うような悲惨な状況でした。

一方、当時は令和4年の春の避難指示解除を想定して、JR双葉駅の西側に大規模な住宅団地を造成していました(写真)。

町の南東地域は、原発事故による汚染物質の中間貯蔵施設の予定地となっており、施設がいつまで利用されるのか、また汚染物質がいつ町外に撤去されるかも明らかになっていません。

ようやく準備宿泊が始まったことを考えると、福島の復旧復興はまだまだ先だと感じます。

国は「復興五輪」を東京五輪のテーマにしていましたが、復興五輪とは何を意味するのか、私には理解できません。

コロナ禍で、国民の福島への関心は薄いと感じます。国には希望する町民が安心して帰還し生活できる環境を整えるために、全力をあげて欲しいと考えます。