新型コロナと農畜産物

新型コロナの感染拡大に伴って、世界的に食料の買いだめの動きが活発化していると報じられています。

感染拡大国では都市封鎖措置により、食料品の流通に支障が生じたり、消費者のパニック買いによって食料品がひっ迫しつつあります。

一方ロシアや中国などでは、穀物の輸出規制を検討しています。主要な食料の輸出国が輸出を規制すれば、食料自給率が低い国にとっては大打撃となります。

農産物の主要輸出国である米国は今のところ輸出規制はしていませんが、「自国第一主義」を掲げるトランプ大統領は、コロナ対策を理由にいつ規制強化を言い出さないとも限りません。

国家安全保障上も食料品が重要な世界的戦略品であることは知られていますが、将来の大規模な感染症の拡大を考えたとき、日本は食料自給率を高めることを真剣に考える必要があります。

今日本の農業を取り巻く環境は、非常に厳しいものがあります。

2018年から環太平洋連携協定(TPP11)、日・EU経済連携協定(EPA)、日米貿易協定という自由貿易協定が次々に発効し、国内はもとより長野県の農業や農畜産物に与える影響は大きいものがあります。

東大大学院の鈴木教授の試算によると、これらの協定により県内の農林業の生産減少額は2017年と比べて454億円~470億円(約16%)と推定されています。特に、豚肉や肉用牛など畜産業への影響が大きくなっています。

国の安全保障や長野県の安全を考えた時、何としても長野県の農畜産物の生産を拡大し、自給率を高めなければなりません(写真は県農業試験場の調査)。

また、安全安心で品質の良い県内農畜産物を積極的に購入し、地産地消を進めなければなりません。

農業は大地や地域を守っており、農地でも特に水田は洪水防止や環境保全など多面的な機能があります。農業振興は大地や国土を守ることにつながります。

過日閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」によると、新たな感染症への対応として、「海外依存の状況を解消し、生産基盤・経営の安定を図ることが重要である」旨記述されており、大いに賛同するものです。

将来の子や孫の世代を守るためにも、大いに「信州産」の農畜産物を食べていきたいものです。