新型コロナと公文書管理

5月14日(木)の中日新聞に、「コロナの教訓生かされない恐れ」「専門家会議の議事録作らず」という内容の記事が掲載されていました。

新型コロナへの対応を専門的見地から政府に助言する「専門家会議」が設けられており、重要な事項が議論されていますが、記事によるとその会議の議事録に問題があるというものです。

国の公文書の管理については「公文書管理法」に規定されており、具体的な取扱基準は「行政文書の管理に関するガイドライン」(平成23年4月内閣総理大臣決定)に規定されています。

この「ガイドライン」の中に、「歴史的緊急事態」というものが規定されています。この緊急事態とは、「国民の生命、身体、財産に大規模かつ重大な被害が生じ、または生じる恐れがある緊急事態」を指します。

「緊急事態」に該当するかどうかは、閣議で決定することになっていますが、今回のコロナについては今年3月の閣議で「該当する」と決定しています。

こうした事態に該当するときは、政府が開催した関係会議等については必ず議事録を作成しなければなりません。コロナの「専門家会議」は、ここでいう関係会議に該当します。

かつて東日本大震災が発生した時、当時の民主党政権は会議等の議事録を作成していなかったことから、これを反省して2012年に「歴史的緊急事態」に該当する場合は、議事録を残すことにしたものです。

議事録に残す目的は、会議等において重要な政策決定が行われた場合に、後からこの判断が正しかったのか検証するためです。

今回記事が問題にしているのは、政府が作成している専門家会議の議事録は、会議における発言者と発言内容が記録されていないという点です。

「ガイドライン」によると、記録すべき内容に「発言者」・「発言内容」を記載することになっていますので、この専門家会議の議事録はガイドラインに則っておらず、不適切ということになります。

「緊急事態」に関する議事録が不適切であれば、今回のコロナに関する重要な議論や意思決定が明確にならず、結果として「コロナの教訓」が将来生かされない恐れがあるということになります。

公文書の管理に関しては、政府は「森友学園」や「桜を見る会」などで文書の改ざんや廃棄などの不適切な対応をし、国会でも大きな議論となり、国民の行政に対する信頼を失墜しています。

ずさんな公文書管理が問題になりながら反省が生かされずに、またもや不適切な文書管理をしているわけで、ますます国民の信頼が低下してしまいます。