「障害者雇用水増し問題」を考える

 

このところ、国では森友・加計などの文書管理問題、防衛省の日報問題、厚労省の「働き方改革」に関する調査改ざん問題、財務省のセクハラ問題など様々な問題が発覚し、国民の行政に対する不信感が高まっています。

過日は中央省庁が雇用する障害者数を、水増しして厚労省に報告していた事実が明らかになり、問題になっています。

次々に明らかになる国の不適正な業務実態に、国民からの批判が更に高まるものと思われます。

障害者の雇用を促進することにより、職業と生活の安定を図ることを目的に、「障害者雇用促進法」が制定されています。

この法律に基づき、国・地方自治体・民間企業などは障害者を一定割合で雇用することが義務付けられています。

法定雇用率(従業員に対する雇用障害者の割合)は、国や地方公共団体は2.5%、民間企業は2.2%となっています。

この雇用率に達しなかった民間企業(従業員数100人超)には、定められた目標に対して1人不足すると月5万円のペナルティー(国への納付金)が課せられます。しかし国や地方に対しては、ペナルティーはありません。

厚労省のガイドラインによると、障害者雇用制度の対象となるのは、原則として障害者手帳などにより確認した人に限られていますが、水増し人数の多くは自己申告や聞き取りなどにより、対象者としてカウントしていたものと思われます。

現在各省庁では、水増しがあったかどうか内部調査を進めていますが、半数を超える省庁が水増しをしていたとの報道があります。また、いくつかの都道府県でも水増しをしていたことが明らかになっています。

各省庁がなぜ水増ししていたのかは明らかになっていませんが、障害者雇用を積極的に進める役割がある国の機関が、不適切な対応をしていたことに国民の理解は得られないと思います。

またこのことについて、ある障害者団体は「障害者に対する背信行為」と主張しています。

長野県庁では調査の結果水増しがあったことを、この23日に公表しました。それによると、雇用障害者数99名(雇用率2.56%)としていたものを、88名(同2.34%)と修正し、11名分が過大に算入されていました。法定雇用率は2.5%ですから、実際には雇用率をクリアしていなかったことが明らかになりました。

私の地元の伊那市役所では水増しは行われていませんが、職員数997人に対して障害者数は21.5人(重度の人は2人、短時間勤務の人は0.5人としてカウントするため端数が出る。)で、雇用率は2.16%で、法定雇用率はクリアしていません(昨年度はクリア)。

「障害者雇用促進法」では、「障害者であることを理由に、募集・採用・賃金・待遇などの面で、障害者でない人と不当な差別をしてはならない」と明確に規定しています。

今回の不適正処理は障害者の雇用促進に背く行為ですが、法定雇用率に固執することなく、更なる雇用を促進すべきと考えます。

また、障がい者に限らず病気を持つ人で就労を希望する人には、働く場が確保されるような社会にしなければならないと思います。